ダイエットの方法は次々と生まれ、ダイエット本や有名人のSNSなどで紹介され話題になっていくのは、さまざまなダイエットに挑戦してみたものの痩せられない人が多いから。
痩せられない理由その1「脳と食欲の関係」
空腹と満腹は脳が決めている
ダイエットしようと決意して、食事制限や運動などを頑張ったとします。その結果、一時的にはやせられるかもしれませんが、体形を維持するのが難しいものです。
とくに運動や食事制限をしなくても痩せてる人と、ダイエットを繰り返しているのにずっと太ったままの人とでは、「脳」に違いがあるといわれています。
結局のところ、太っている人は例外なく食べ過ぎています。もちろん、食べることは生きていくのに必要不可欠ですが、肥満は消費するエネルギーよりも食事で摂るエネルギーが上回ったことによって起こります。
そのように食べすぎてしまう原因は、食べることによって「おいしい」という快感を覚えてしまった脳が、「もっと食べたい」という指令を出しているからです。
食中枢は脳の視床下部にある
胃などの消化器官からの情報が、脳の視床下部にある食中枢に送られることで、私たちは空腹や満腹を感じます。
食中枢は、空腹感とともに摂食ををうながす「接触中枢」と、満腹感とともに摂食を止める「満腹中枢」から成り立っています。
お腹が空いて食べる、お腹がいっぱいになって食べるのをやめる。その判断は胃からの情報だけでなく、食中枢で統合されておこなわれます。
満腹感と空腹感のメカニズム
胃からの情報以外で接触中枢の活動を調整するものに「血糖値」があります。
血液中のブドウ糖の量が低下すると、接触中枢の細胞が活性化します。また、ブドウ糖が不足すると体の脂肪細胞を分解してエネルギーをつくりだします。
この時に、摂食中枢の細胞を刺激して食欲を引き起こす遊離脂肪酸が生じます。遊離脂肪酸はおもに筋肉や内臓のエネルギー源として使われますが、ときには「空腹だ!」とサインを送ることもあるのです。
空腹感のメカニズム胃の中に食べ物が入っていないと血糖値が低下し、ブドウ糖の欠乏→遊離脂肪酸の血中濃度が上昇[/st-step]
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2摂食中枢が活性化
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3空腹感を感じる
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4接触を開始
満腹感のメカニズム
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1摂食行動
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2血糖値の上昇
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3摂食中枢の活動が低下し、満腹中枢の活動が上昇
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4満腹感→摂食終了
ストレス太りと脳の関係
仕事や家庭、人間関係などでストレスを感じている人は多いのではないでしょうか。
人はストレスを受けると、脳の視床下部から摂食をおさえるホルモンが分泌されます。であれば、やけ食いなんて怒らないはずですが、ストレスが多すぎると今度は摂食を高めるホルモンが増加してしまいます。
つまり、ストレスによって食欲が低下する段階と、さらに強いストレスを受けると食欲が増していくという現象が起こるのです。
そのため、ストレスを感じたことで食べられなくなる人もいれば、食べすぎてしまう人もいるのです。
いずれにしても、ストレスが接触行動に悪影響を及ぼしているのは間違いないといえますね。
脳をだまして痩せられる?
過度な食事制限によるダイエットで急激にやせた場合は、脳が体の危険を察知して、生命維持のために「もっと食べるように」と指示を出します。
そうなるとダイエットをしているにも関わらず、食欲が増してしまい脳にストレスがかかります。
大きな器に料理が少しだけ盛られているのを見ると、脳は「これでは少ない」と感じて、満腹感が得られません。
逆に、小さな器で大盛りになっていると、たとえ量は同じだとしても「たくさん食べられる」と感じ満腹感が得られやすくなります。
色を利用する
視覚を通じて得られるイメージは、食欲に影響を与えます。たとえば赤は興奮、青は鎮静、暖色系は食欲をうながす効果があるといわれています。
そこで、一般的に食欲が減退するといわれている「青色」を食事の際にとりいれましょう。器やテーブルクロスを青にすると食欲をおさえる効果が期待できます。
よく噛みニセの食欲を防ぐ
空腹時に糖質の多いものをたくさん食べると血糖値が急上昇し、血糖値を下げようとインスリンが一気に分泌されます。
このような血糖値の乱降下が起きると、胃の中に食べ物が残っていても空腹感を感じます。そんな「ニセの食欲」を防ぐためには「よく噛むこと」がたいせつです。
よく噛むことで脳にたくさん食べたと勘違いさせ、また血糖値の急上昇をおさえる効果もあります。
痩せられない理由その2「腸内環境」
ダイエットのカギとなる腸内フローラ
腸内環境と肥満には、密接な関係があるといわれています。生活習慣の良し悪しが反映されやすいのが「腸」であり、腸内環境が悪くなると便秘や肌荒れ、免疫力の低下など、体にさまざまな不調が現れます。
さらに、腸内環境が乱れると太りやすい体質になることも分かっています。ダイエットだけでなく、健康維持のためにも腸内環境を良くすることが大切です。
腸の中には1000種類以上の腸内細菌が生息していて、顕微鏡で見るとお花畑のように見えるので、「腸内フローラ」と呼ばれています。
腸内細菌には3種類あり、それぞれ「善玉菌」、「悪玉菌」、「日和見菌」と呼ばれています。この3つの割合は、2:1:7になるのが理想とされています。
しかし、食生活の乱れやストレス、また加齢によりバランスが崩れることが多く、肥満につながるといわれています。
肥満に関係する「デブ菌」と「ヤセ菌」とは?
腸内フローラの中には、「デブ菌」と「ヤセ菌」が存在しています。太っている人には「デブ菌」が多くて「ヤセ菌」が少ないことから、そのひとの腸内フローラをしらべれば太りやすいかどうかが分かるといわれています。
デブ菌を増やす食べ物
- 白砂糖
- 加工肉
- 小麦粉
- 揚げ物
- 冷たいもの
ヤセ菌を増やす食べ物
- 納豆
- ヨーグルト
- もち麦
- 海藻
- 玉ねぎ
年齢を重ねると悪玉菌が増加
腸内フローラは年齢によって変化してきます。胎児のときは無菌状態で、出征後は母乳を通して善玉菌のビフィズス菌が大半を占める腸内環境となります。
離乳食のころになると、悪玉菌と日和見菌も出てくるようになり、大人と同じような腸内フローラになります。
その後、高齢になってくると腸内のビフィズス菌が減り、ウェルシュ菌などの悪玉菌が増えてきます。
悪玉菌が優位になると・・・
腸の活動が弱くなり食べ物の消化吸収が悪くなると、腸内に老廃物がたまり、さまざまな不調の原因になります。
さらに腸内で腐敗した老廃物は、毒素や発がん性物質を発生させる原因にもなるので、腸だけでなく他の臓器にも影響を及ぼす原因にもなるのです。
こんな症状が出たら注意
- 便秘・下痢・ガス溜まり
- 肌荒れ・吹き出もの
- 自律神経の乱れ
- 口臭・体臭
腸内環境とやせホルモン「セトロニン」の関係
心のバランスを整えるホルモン「セトロニン」は、うつ病の発症とも関係があるため、脳にあると思われがちですが、じつはセトロニンの90%は腸でつくられているのです。
腸内環境が乱れると、セトロニンの量が減ってしまいます。セトロニンは消化を助けるはたらきをしているので、分泌が少ないと便秘になるといわれています。
また、セトロニンが不足すると精神的に不安定になり、ストレスを感じるようになります。すると自律神経の乱れが起きて、眠りが浅くなり睡眠不足に陥ってしまいます。
睡眠不足は食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌をおさえてしまうので、食べすぎの原因にもなります。
また、セトロニンにも食欲をおさえるはたらきがあるので、「やせホルモン」といわれています。
痩せられない理由その3「代謝ダウン」
慢性的な運動不足は代謝のダウンを招く
基礎代謝とは、私たちが生きていくうえで最低限必要な活動に使われるエネルギーを指します。
動かずにずっと寝ていたとしても、生命を維持するためにはエネルギーが必要で、内臓を動かしたり、体温を保ったりするエネルギーがそれにあたります。
体をきたえて筋肉量を増やすと、基礎代謝がアップして痩せ体質になります。逆に、筋肉が少なく脂肪が多い場合には、基礎代謝が少ないので痩せにくくなります。
基礎代謝以外では、総エネルギーの約2割が生活活動代謝で、1割がDIT(食事誘導性体熱産生)です。歩いたり、話したり、考えたりなど、日常生活や思考、判断のために使うエネルギーです。
これらを合わせた1日の総消費エネルギーよりも摂取カロリーのほうが多い状態が続くと、余ったエネルギーは体に蓄積され、結果太っていきます。
年齢とともに基礎代謝量は減っていきますが、運動不足で筋肉量が減少したり、生活活動代謝が減ったりすると更に痩せにくくなります。
若いときと食事の量は変わらないのに太りやすくなるのは、年齢を重ねると基礎代謝がダウンしたことが影響しています。