「高分子ポリマーは皮膚呼吸を妨げるので、肌には良くない」といった話を聞いたことはありますか?
そもそもヒトは皮膚呼吸をしているのでしょうか?皮膚呼吸が妨げられることで肌トラブルが起こっているのでしょうか?また、化粧品で使われている合成ポリマーとはどんな成分なのでしょうか?
そこで今回は、ヒトの皮膚呼吸や皮膚の正しい知識と、化粧品に配合される合成ポリマーについてご紹介します。
皮膚呼吸と合成ポリマーの正しい知識
皮膚呼吸とは皮膚で行う呼吸のことで、肺呼吸をする人間はほとんど皮膚呼吸を行っていません。そのため、皮膚呼吸ができないことで肌ダメージを受けることはありません。
もちろん、フェイスマスクや化粧パックによる肌トラブルや、メイクを落とさないことで起こる肌トラブルも、皮膚呼吸が妨げられたことが原因ではありません。
また、食品用のラップなどに合成ポリマーが使われていることから、「合成ポリマーは密封性があって皮膚呼吸を妨げる」という誤った認識を持つ方がいます。
ポリマーとは同じ物質がたくさんつながった重合体のことで、例えば、たんぱく質もアミノ酸の重合体です。
ポリマーのなかで、化学合成したポリマーは「合成ポリマー」と呼ばれ、1万以上の高い分子量を持つものを「高分子ポリマー」と言います。化粧品にもヒアルロン酸などの合成ポリマーが使われています。
つまり、合成ポリマーといっても、化粧品に使われているものと食品用のラップに使われているものは別物なのです。化粧品に配合されている合成ポリマーは、それほど濃度が高くなく、親水性ポリマーなので、顔を水などで洗えば簡単に落ちてしまいます。
さらに、化粧品で使われる合成ポリマーは、オールインワン化粧品やクレンジングジェルなどに使われる「ジェル化」や「ゲル化」の技術の進歩に貢献しています。
高分子ポリマーが連結して3次元の網目構造になっている隙間に、水分や油分などほかの成分を閉じ込めることで、液体と固体の中間のような独特の形状を持ちつつ、配合された成分を安全に保っているのです。
また、カルボマーなどの微量の高分子ポリマーを配合することで、肌にストレスをかける界面活性剤の量を減らすことが可能です。
皮膚の役割
皮膚の役割は呼吸をすることではありません。本来の皮膚の役割は、物理的な外力や刺激から守る、水分の侵入や体液の不必要な喪失を防ぐ、病原菌や有害物質の侵入を防ぐ、紫外線の侵入を防ぐ、体温を調整する、知覚作用、分泌作用などです。
そのため、皮膚呼吸に関する誤った知識に振り回されて皮膚呼吸を意識するのではなく、スキンケアやエイジングケアの基本である、「正しいクレンジングや洗顔」、「保湿」、「紫外線対策」の3つを正しく行うことが大切なのです。
まとめ
美容業界や化粧品業界で使われている皮膚呼吸に誤解の多いことがお分かりいただけましたか?誤った情報に振り回されないために、正しい皮膚の知識、正しいスキンケアやエイジングケケアの知識を身につけましょう。